【スムーズ】第1話 相続税額の把握【相続】

【スムーズ】第1話 相続税額の把握【相続】

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はじめに

今回より「次世代へのスムーズな相続をするために知っておくべきこと」をテーマに以下の全5話にて記事を紹介していきたいと思います。

  • 第1話 相続税額の把握
  • 第2話 相続税対策を検討する
  • 第3話 相続税対策に適する不動産を知る
  • 第4話 相続前の準備
  • 第5話 相続発生後の対応

実際に相続が起きると10カ月以内に相続税を納付しなければなりません。その時には普段の生活に加え、様々なやるべきことに追われ、なかなか思うように動くことができません。そこで、事前に相続税額を把握し、必要があれば余裕を持って相続税対策を考えることが大切です。
そこで第1話は「相続税額の把握」ということで、相続税のおおまかな金額の目安を自分で計算できるようになることを目的にした記事となっています。最後までご覧いただければおおまかではありますが、相続税がどのくらいかかるかの目安を計算できるようになるかと思います。

注意

  • 2021年1月現在での法令・税制をもとに作成しています。
  • あくまでも将来の相続税の目安を自分で計算できるようにするためであり、実際の相続時の税務計算をするためではありません。
  • 本記事で紹介する制度がすべてではありません。

相続税の計算の仕方

資産(課税価格)の把握

相続税の対象となる資産のことを「課税価格」といいます。課税価格を求めるには以下のように計算します。

本来の相続財産
みなし相続財産
非課税財産の価額
相続時精算課税制度の贈与財産の価額
債務控除および葬式費用の額
生前贈与財産(相続開始前3年以内の贈与財産)

それでは、それぞれどういうものなのか一つ一つ見ていきましょう。

本来の相続財産(+)

被相続人の財産のうち、金銭に見積もることができる経済的価値のあるもの全てのことをいいます。どのようなものが、そしてどのような評価額になるのかを見ていきましょう。

■現金・預貯金

現金や預貯金は金額がそのまま評価額になります。

■有価証券

基本的には時価の考えになります。

上場株式:下記のうち最も低い価額
・課税時期の最終価格
・課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
・課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
・課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
● 公社債(国債、社債等)
種類によって異なるが、基本的には時価(+利息分)の考えになります。
※計算が複雑なため国税庁HPの利付公社債・割引発行の公社債の評価をご覧ください。

■土地

土地の評価額については2種類の方式があります。

● 路線価方式:相続税路線価を元に評価

  1. 国税庁HPの財産評価基準書|国税庁より土地の相続税路線価を調べる
  2. 路線価 × 土地の面積 = 大まかな路線価評価額(参考値)
    ※正確にはもっと細かい計算がありますが目安としては十分かと思います。
    ※細かい計算については国税庁HPの路線価図の説明をご覧ください。

面積:190㎡
路線価:46E → 46,000円
路線価評価額:
46,000円 × 190㎡ = 8,740,000円

※路線価の数字:単位1,000円

● 倍率方式:固定資産税評価額を元に評価

  1. 固定資産税の課税明細書等から固定資産税評価額を調べる
  2. 該当する土地の倍率を調べる
    ※倍率に関しても国税庁HPの財産評価基準書|国税庁より調べることができます。
  3. 倍率が書いてある場合:固定資産税評価額 × 倍率 = 倍率評価額
    ※詳しい計算方式については評価倍率表(一般の土地等用)の説明をご覧ください。
  4. 倍率ではなく「市比準」と書いてある場合:
    (1㎡あたりの宅地評価額 - 1㎡あたりの造成費用) × 面積 = 評価額
    ※造成費用の計算については都道府県によって異なります。 国税庁HPの財産評価基準書|国税庁より 調べることができます。

■家屋

家屋は固定資産税評価額がそのまま評価額になります。

※土地や家屋については貸付している場合に評価を減らすことができます。詳細は以下の記事をご覧ください。

■その他(家具、什器、貴金属、宝石、書画、骨とう品等)

基本的には時価の考えで、各種査定等の金額を元に評価額を計算することがほとんどです。

みなし相続財産(+)

法律的には相続又は遺贈により取得したものではないが、実質的に相続又は遺贈により取得した財産と同様の経済的効果を持つものについては、財産を相続又は遺贈により取得したものとみなして相続税の課税対象としています。これを「みなし相続財産」と言います。

生命保険等

保険料の支払者が被相続人の場合は相続財産となります。
保険料の支払者と受取人の関係によっては贈与や一時所得になります。
※一定の金額は非課税財産になる

  • 被保険者:A 被相続人
  • 保険料負担者:A 被相続人
  • 保険金受取人:B 長男
  • 被保険者:A 被相続人
  • 保険料負担者:C 配偶者
  • 保険金受取人:B 長男
  • 被保険者:A 被相続人
  • 保険料負担者:B 長男
  • 保険金受取人:B 長男

■退職手当金等

被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの

※一定の金額は非課税財産になる

非課税財産の価額(-)

相続又は遺贈により取得した財産のうち、公益性や社会政策的見地や国民感情の面から、相続税の課税対象から除くことができるものを非課税財産と言います。

■生命保険等のうち一定の金額

500万円 × 法定相続人の数 = 保険金等の非課税限度額
※法定相続人に関しては後ほど説明します。

■退職手当金等のうち一定の金額

500万円 × 法定相続人の数 = 退職手当金等の非課税限度額
※法定相続人に関しては後ほどご説明します。

■その他

・墓所、霊びょう、仏壇、仏具など
・一定の公共事業を行う者が取得した公共事業用財産
・相続税の申告までに、国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄附した財産 など

相続時精算課税制度(+)

  1. 被相続人の生前に納税者(受贈者)がこの制度を選択すると、その年から贈与税額が変わる
    ・特別控除額:累計2,500万円
    ・税率:一律20%(贈与額の累計額が2,500万円を超えると一律20%)
    ※制度を選択するには事前に「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要
  2. 本制度を適用した場合、相続開始時にそれまで受贈された価額が相続財産額に加算される
    ※価額は贈与時の価額
  3. 相続税額からすでに納付した本制度に係る贈与税額を控除した金額を納付する
    ※贈与税が相続税を上回る場合は還付される

この制度には対象者が定められています。

・贈与者:贈与した年の1月1日において60歳以上
・受贈者:贈与者の推定相続人である直系卑属及び孫のうち、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上

債務控除及び葬式費用の額(-)

■債務控除

被相続人が負担した債務の金額(いわゆる借金)

■葬式費用

●控除の対象となるもの
・仮葬式、本葬式の費用
・通常葬式に伴うものと認められるもの(お通夜、弔問客への食事代、お布施代等)
・死体の捜索、運搬に要した費用
●該当しないもの
・香典返礼費用
・墓碑、墓地の購入費、墓地の借入料
・法要のための費用
・医学上、裁判上などの特別な処置に要した費用

生前贈与財産(+)

相続が開始する前3年以内の贈与財産は相続税の課税価格に加算される

加算される価額は贈与時の価額で計算する

相続が起きた年に受けた贈与財産は初めから相続財産として計算する

相続税より該当贈与税は控除される

基礎控除の計算

基礎控除とは

「課税価格の合計額」から控除する金額
要するに相続税の課税最低限度額の事

基礎控除の計算式

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

例)法定相続人が3人の場合
3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

法定相続人とは

誰が法定相続人になるかは以下の記事をご覧ください。

上の記事に追加して以下の点も気を付けてください。

・相続の放棄があった場合には、放棄がなかったものとして計算
・被相続人の養子がいた場合は、以下の人数までが法定相続人となります。

  1. 被相続人に実子がいる場合 → 1人
  2. 被相続人に実子がいない場合 → 2人

但し、以下の者は実子とみなされます。

  1. 特別養子縁組により養子となった者
  2. 配偶者の実子で被相続人の養子となった者
  3. 配偶者の特別養子縁組による養子となった者で被相続人の養子となった者
  4. 実子等の代襲相続人

相続税の計算

相続税の計算式

1.課税遺産総額を求める

「課税価格の合計額」 - 「基礎控除」

2.各相続人の法定相続分を計算する

「課税遺産総額」 × 「法定相続分の割合」

※法定相続分は以下の記事をご覧ください。

3.相続税の総額を求める

「各相続人の法定相続分」における相続税額を計算する

法定相続人の取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

4.相続税の按分割合を求める

「実際に相続する課税価格」 ÷ 「課税価格の合計学」

5.各相続人の相続税額を求める

「相続税の総額」 × 「按分割合」

以上が各相続人が負担する相続税額の計算の仕方です。他にも様々な特例や軽減等ありますが、まずはおおまかな目安として相続税がどのくらいかかるのかを知っておくことがとても大切だと思います。
続いてはテストケースで相続税を計算してみましょう。

テストケース

基本情報

家族構成

  • 配偶者A
  • 長男B
  • 長女C

■ 法定相続人3人

相続財産

現金・預貯金11,000万円
株式500万円
土地3,500万円
家屋2,000万円
生命保険2,500万円
借金-1,800万円

葬式費用

葬式費用-200万円

資産の把握

本来の相続財産(+)

現金・預貯金11,000万円
株式500万円
土地3,500万円
家屋2,000万円
合計17,000万円

みなし相続財産(+)

生命保険2,500万円
合計2,500万円

非課税相続財産の価額(-)

生命保険非課税限度額
500万円 × 3人(法定相続人の人数)

合計-1,500万円

債務控除および葬式費用の額(-)

借金-1,800万円
葬式-200万円
合計-2,000万円

相続時精算課税制度の贈与財産の価額(+)

本ケースでは該当なし

生前贈与財産(+)

本ケースでは該当なし

課税価格の合計

本来の相続財産17,000万円
みなし相続財産2,500万円
非課税財産の科学-15,000万円
相続時精算課税制度の贈与財産の価額
債務控除および葬式費用の額-2,000万円
生前贈与財産
課税価格の合計16,000万円

基礎控除の計算

法定相続人の数
3,000万円( 600万円×3人 )
合計4,800万円

相続税の計算

課税遺産総額を求める

課税価格の合計基礎控除課税遺産総額
16,000万円4,800万円11,200万円

各相続人の法定相続分を計算する

課税遺産総額法定相続割合法定相続分
配偶者A11,200万円×1/25,600万円
長男B11,200万円×1/42,800万円
長女C11,200万円×1/42,800万円

相続税の総額を求める

相続税の計算は以下の速算表より求められます。

法定相続分税率控除額相続税額
配偶者A5,600万円×30%700万円980万円
長男B2,800万円×15%50万円370万円
長女C2,800万円×15%50万円370万円
合計1,720万円

相続税の按分割合を求める

今回のケースでは実際の相続分配を法定相続分で分配しています

各人の課税価格課税価格の合計按分割合
配偶者A8,000万円÷16,000万円1/2
長男B4,000万円÷16,000万円1/4
長女C4,000万円÷16,000万円1/4

各相続人の相続税額を求める

相続税の総額按分割合相続税額
配偶者A1,720万円×1/2860万円
長男B1,720万円×1/4430万円
長女C1,720万円×1/4430万円

※配偶者は配偶者控除があるので法定相続分、または1億6千万円までは非課税となります。

さいごに

冒頭でお伝えした通り、相続税の納付期限は相続の開始より10カ月以内となっています。相続が起きた際には、葬儀の準備や遺産分割協議、その他様々な対応を普段の生活に追われながらやらなくてはなりません。そんな心身ともに疲れている時に相続税のために色々と考えることはとても大変です。また、相続税を支払うための現金が足りず土地を売却しないといけなくなったとしても、期限内に売却しなければならないため泣く泣く安い金額で売却しなければならないようなことにもなりかねません。
そうならないためにも概算でもいいので事前に相続税の目安を知り、必要であれば相続税の対策や遺産の分割方法などを家族みんなが納得できる形で考えておく(話し合う)ことがとても大切です。
次回は「相続税対策を検討する」というテーマで、様々な相続税対策の特徴やメリットデメリットを紹介させていただきますので、そちらもぜひご覧ください。

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