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結局、賃貸経営は相続税対策になるの?
賃貸経営のよく聞くこんな話
- 相続税対策といえば賃貸経営
- 借金をすれば相続税対策になる
様々な建築会社や不動産屋さんからたびたびこのような話を聞くかと思います。「みんな言うのだからきっと相続税対策になるんだろう」と思っている方も多いかと思います。でも実際のところ、本当に相続税対策になるのでしょうか?
賃貸経営は相続税対策になります!
結論から申し上げますが、賃貸経営は相続税対策になります。ただし、適正な賃貸経営でない場合は、相続税対策として節税した金額以上に負担になることもあるので注意が必要です。
≪参考≫相続税早見表
実際にどのくらいの相続税になるのか確認してみましょう。
※この早見表は法定相続割合で相続し、配偶者控除のみを適用したことを想定して計算しています。
相続額 | 配偶者 子供1人 | 配偶者 子供2人 | 配偶者 子供3人 | 子供1人 | 子供2人 | 子供3人 |
---|---|---|---|---|---|---|
4000万円 | - | - | ー | 40万円 | ー | ー |
6000万円 | 90万円 | 60万円 | 30万円 | 310万円 | 180万円 | 120万円 |
8000万円 | 235万円 | 175万円 | 138万円 | 680万円 | 470万円 | 330万円 |
1億円 | 385万円 | 315万円 | 263万円 | 1220万円 | 770万円 | 630万円 |
2億円 | 1670万円 | 1350万円 | 1218万円 | 4860万円 | 3340万円 | 2460万円 |
3億円 | 3460万円 | 2860万円 | 2540万円 | 9180万円 | 6920万円 | 5460万円 |
4億円 | 5460万円 | 4610万円 | 4155万円 | 1億4000万円 | 1億920万円 | 8980万円 |
5億円 | 7605万円 | 6555万円 | 5963万円 | 1億9000万円 | 1億5210万円 | 1億2980万円 |
賃貸経営の具体的な3つの相続税対策手法
本題に入る前にざっくり相続税の計算方法

相続税の計算は難しそうなイメージがありますが、基本はこのような計算式で求められます。この中の「税率」は課税価格の合計から基礎控除を引いた額によって税率が変わります。もちろんその額が多ければ税率も高くなります。そこで、今回説明する3つの手法では、「課税価格の合計」を下げることによって相続税を下げる手法となっております。
相続税対策①借金による節税【債務控除】
課税価格の合計とは下の図のように計算されます。

「課税価格の合計=プラスの財産ーマイナスの財産」で求められます。
例えば現金5,000万円と借金2,000万円を相続した場合では5,000万円ー2,000万円となり、課税価格の合計は3,000万円となります。借金は借金をした額がそのままプラスの財産より引くことができ相続税の税額を抑えることができます。
相続税対策②現金の不動産化による節税
課税価格は財産の種類によって評価が異なります。
今回はその中でも3つの財産について説明します。
1.現金の課税価格の評価

現金はその金額がそのまま評価額になります。
2.土地の課税価格の評価

土地の評価額は相続税路線価額で決まります。相続税路線価とは相続税等の評価額を決めるために定められた路線価で地域よって変わります。相続税路線価についてはこちらの国税庁のHPをご覧ください。
土地の価格と相続税路線価には差があり、地域により様々ではありますが一般的には80%程度と言われています。そこで現金で土地を購入することで課税評価額を20%程度抑えることができます。
3.建物の課税価格の評価

建物の評価額は固定資産税評価額と同じになります。土地や建物を所有していると毎年4月頃に固定資産税・都市計画税納税通知書が届くと思いますが、その中の課税明細書に記載されています。
土地と同様に建物の建築費と固定資産税評価額には差があり、建物により様々ですが新築時で一般的に70%程度と言われています。また建物の評価額は定期的に見直しされ評価額はさらに減少します。
相続税対策③不動産を賃貸することによる節税
不動産を賃貸することで土地と建物ではそれぞれ評価の仕方が異なります。土地は「貸家建付地」の評価、建物は「貸家」の評価となります。
1.貸家建付地の評価
アパートや戸建賃貸などの賃貸経営をしている土地の部分の評価は貸家建付地の評価になります。貸家建付地の評価の計算は以下の通りです。

借地権割合:土地を賃借した時の相続税等の評価の割合(地域により30%~90%)
借家権割合:建物を賃借した時の相続税等の評価の割合(全国一律30% ※2020年8月現在)
賃貸割合:実際に入居している割合(床面積での割合)
※借地権割合については相続税路線価と同じくこちら(国税庁HP)から検索できます。路線価図の数字の後のアルファベットが借地権割合を示しています。
現金の不動産化による土地の評価がおよそ80%とお伝えしましたが、そこからさらに貸家建付地の評価を計算すると以下のようになります。

2.貸家の評価
賃貸している建物は貸家の評価になります。貸家の評価の計算は以下の通りです。

現金の不動産化による建物の新築時の評価がおよそ70%とお伝えしましたが、そこからさらに貸家の評価を計算すると以下のようになります。

対策した場合としなかった場合の比較
今までご説明させていただいた相続税対策を全て行った場合と、全くしなかった場合の二通りでどのくらい相続税の金額に差があるかを計算してみました。
例)現金1億円の資産を「現金をそのまま相続した場合」と「賃貸経営をしてから相続した場合」の相続税の比較。法定相続人は子供一人だったと仮定。

なんと賃貸経営をしない場合とした場合で900万円以上もの節税効果がありました。
補足①基礎控除は3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)⇒3,600万円で計算しています。
相続税計算の詳しい内容はこちら(国税庁HP)
補足②相続税は左:(1億円ー基礎控除3,600万円)×30%-700万円
右:(5850万円ー基礎控除3,600万円)×15%-50万円 で計算しています。
相続税の税率の詳しい内容はこちら(国税庁HP)
注意すること
ここまで賃貸経営が相続税対策になる理由を3つ説明させていただきました。このように借金をしたり、現金を不動産に変えたり、不動産を賃貸することで相続税対策になるという事はご理解いただけたかと思います。ただし、賃貸経営が相続税対策になるという事実は変わりませんが、賃貸経営をした方が財産を多く残せるとは限りません。例えば、
- 立地が悪い等の理由で入居がなかなか決まらない
- 老朽化で高額な修繕費の支払い
- 賃貸経営を終えた時の解体費用
- 購入した土地の価値が大幅に下落
- など
このような様々な理由で賃貸経営が立ち行かなくなり、収支もマイナスになってしまい
賃貸事業のマイナスの合計額 > 相続税対策による節税効果
「相続税対策による節税効果」よりも「賃貸事業のマイナスの合計額」が上回ってしまった場合は「賃貸経営をしない方が財産を残せた」という結果になってしまいます。相続税対策の節税効果をしっかりと活かすためには適正な賃貸経営が必要不可欠という事です。
まとめ
今回は賃貸経営が本当に相続税対策になるかを説明させていただきました。
内容をまとめるとこうなります。
1.借金による節税効果【債務控除】
■借金の金額が課税価額の合計から控除
2.不動産化による節税
■土地がおよそ80%建物がおよそ70%に評価減
3.賃貸による節税効果
■貸家建付地、貸家の評価でさらに評価減
※注意
■賃貸経営で節税以上の損失では本末転倒
冒頭で申し上げた通り賃貸経営は相続税対策になります。ただし、「相続税対策」=(イコール)「財産をしっかり残せる」という事ではありません。相続税対策を目的に大きなマンションを建築したものの、入居もつかず修繕費用ばかり掛かってしまっては子供たちに負の遺産を残すようなものです。せっかく相続で残した現金もこの負の遺産のせいで失ってしまう事もあります。
相続税対策は次の代の人たちがより幸せになることを願っての事です。そのために相続税対策の手段として賃貸経営を選ばれる際には、その賃貸事業が適正なものなのかをしっかりと調べてから行う事が必要です。
その中で分からないことや知りたいことがあったら専門家にキチンと話を聞くことをおすすめします。